case01
case1. 急に癇癪を起こすAさん
いつもは笑顔いっぱいで穏やか。先生の指示で次の学習に移行し、授業にもおちつて参加している。PECSの指導・スケジュールの取り組みもしている。
一日の中で急に友だちの髪を引っ張ることがある。不安定な日もある。
- 考 察 -
PECSの絵カードが要求したいものでない。
スケジュール通りに行動するが、頑張りすぎてしまう。
眠い・しんどい等、生理的不快感を伝えられないのも問題。
- 手立て -
強化子アセスメントをし、強化子を要求カードに使う。
PECSをマニュアル通りに指導する。休憩の要求や不快感時の代替行動を学習する。
- 結 果 -
休み時間に自分がやりたいことや不快感時に落ち着くアイテムを要求できるようになった。
また休憩の要求を学習し、情緒が安定した。
PECSの学習も進み、語彙が拡大した。スケジュールで自発的な行動が増えた。
ポイント:強化子アセスメント/代替行動/休憩
case02
case2. 人を噛むBさん
生活でよく使う言葉は理解している。要求は直接行動。
行動を止められ大癇癪を行う時がある。止めた支援者を噛む。
注目行動で近くにいる友だちを噛む時もある。
- 考 察 -
癇癪や噛む行為で要求や注目を獲得した学習を積み重ねてきたのが問題。
理解を促すより、まずは自発要求の学習を積み重ねることが必要。
- 手立て -
相手を介し、相手にわかりやすいPECSを学習する。
進んできたら、「待って」「交渉」「指示に応じる」「スケジュール」等の理解コミュニケーションも組み込んでいく。お手伝い等、スケジュールにやることを計画していく。
- 結 果 -
フェイズⅣまで学習がすぐ進んだ。
「待って」や「指示に応じる」等をスモールステップで学習し、癇癪が減った。
生活の中でお手伝いが増えてきた。友だちを噛むことも減ってきた。
ポイント:表出から理解へ/代替行動
case03
case3. 強化子が見つからないCさん
学校ではいつも先生にひっついている。
授業では自発的な行動は少ないが、逸脱することもない。
紐や棒で遊ぶことはあるが、人や物・遊具等で遊ぶ姿はほとんど見ない。
家庭では声もよく出て、よく動くらしい。
- 考 察 -
環境に慣れるのに時間がかかる。
刺激が少ない環境の方が安心でき、自分を発揮できるかもしれない。強化子も沢山ありそう。
- 手立て -
休み時間や休日は静かな環境で過ごす。
家庭と連携し強化子アセスメントをする。それを絵カードで要求する学習を行う。
PECSをマニュアル通りに指導する。休憩の要求や不快感時の代替行動を学習する。
- 結 果 -
静かな刺激が少ない環境であれば、絵カードで要求することが増えてきた。
状況により要求するものが変わるが、笑顔で活動することが増えてきた。先生への依存も減ってきた。
ポイント:環境調整/強化子アセスメント
case04
case4. 気に入った先生に固執するDさん
学校でも事業所でも特定の先生に依存する。
違う指導者が担当し、特定の先生が違う児童生徒に関わると大癇癪。
担任(担当)が変わると特定の先生は変わる。 強化子は沢山ある。
- 考 察 -
癇癪を起こしたら思いが通る学習を積み重ねている。
直接行動で要求を得ているのも問題。
- 手立て -
人を介し、相手にもわかりやすい絵カードで要求する学習を行う。
同時に「待つ」「指示に従う」「スケジュール」等、理解コミュニケーションの学習も行う。
- 結 果 -
絵カードで特定の先生を要求するようになり、徐々に「待って」に応じられるようになった。
視覚的強化システムやスケジュールで特定の先生との活動を遅延できるようになった。
他の先生でも活動できるようになってきた。
ポイント:自発要求/表出から理解へ/スモールステップ
case05
case5. 自分の世界に没頭するEさん
要求は直接行動が多いが、質問すると言葉で要求する。感じたことや嬉しかったことは言葉でコメントする時がある。状況を見ず、一方的に話し続けることがある。
自分の世界に没頭し、授業での逸脱が多い。
着替えや掃除もスキルはあるが、自分からなかなかしない。家庭では要求を何度も伝えたり、大きな声で騒いだりが多く、家族のストレスが高まっている。
- 考 察 -
言葉の学習を中心に行ってきており、コミュニケーションの学習をしてきていない。
表出から理解のコミュニケーションの学習を丁寧に進めていくことが必要。
強化子を活用すれば、授業での集中力・自発的な活動が増えるかもしれない。
- 手立て -
絵カードで要求する学習を進める。強化システムを導入し、授業での集中力を高めたり、着替えや掃除等のモチベーションを高めたりする。
- 結 果 -
PECSは、すぐにフェイズⅥまで進んだ。
語彙が増え、助詞カードを入れても要求できるようになった。
視覚的強化システムやスケジュールに強化子を入れることにより、支度や着替え・掃除等に自分から取り組むようになり、早く済ませることができるようになった。
学校で作ったスケジュールや活動の手順書を家庭に渡し活用してもらえるようになった。
家での繰り返す要求や大声は減ってきた。
ポイント:強化子の活用/表出から理解へ
case06
case6. 多言語の中で生活するFさん
母親は少々日本語でのやりとりはできるが、父親はポルガル語や英語での会話が中心。学校に来ると日本語が中心。
Fさんが自発的に要求することはほとんどなく、質問すると指差しで要求する。
先生が指示をすると、そのように行動する。
- 考 察 -
いろいろな手段の中でそれなりに生活できているが、自発性が弱い。指示待ち(プロンプト依存)。
- 手立て -
誰でもわかりやすい絵カードを使用したコミュニケーション学習を進める。
自発性を育みながら理解コミュニケーションを進める。成長の様子をご家庭に丁寧に伝えていく。
- 結 果 -
学校では自発的に要求ができるようになり、コミュニケーションスキルが向上した。
「待って」「ダメ」の理解やスケジュールの学習も進んだ。
家庭でも絵カードの使用を始め、興味を引くための行動が減少している。
ポイント:共通の手段/自発性
case07
case7. 特定の子を攻撃するGさん
言葉で多くのことを話すが、話が一方的だったり、要求は直接行動だったりする。
要求が叶わないと支援者を蹴る・叩く・噛む。また、特定の子を蹴ったり、髪をつかんだりすることがある。家庭では言葉でのやりとりが中心。
- 考 察 -
他害することで要求を通したり、注目を集めたりする学習を積み重ねてきた。
丁寧なコミュニケーションの学習が必要。
- 手立て -
PECSを学習し、自発的な要求を適切に表出できるようにする。
表出と同時に理解コミュニケーションの学習も進める。
特定の子との接触を物理的に離し(部屋や衝立等)、他害が減ってきたら徐々に一緒の活動を増やしていく。
- 結 果 -
すぐにフェイズⅣまで学習が進む。
絵カードで要求できるようになったら、「待って」「ダメ(代替物を提供)」「口頭指示」「視覚的強化システム」「スケジュール」等の理解の学習も進んだ。他害が激減した。
iPECSの学習も進み、絵カード・iPad・言葉 等、いろいろな手段を使いコミュニケーションできるようになっている。
ポイント:表出から理解/自発要求
case08
case8. 学校でPECSをしてもらえないHさん
いくつか言葉を話すが、不明瞭で相手に伝わらないことが多い。
伝わらないと自傷や物を投げる行為がある。
家庭ではPECSを始めフェイズⅣまで学習が進んだ。
自傷や物投げ行為が減った。また、iPECSの学習も進めている。
ただし、学校でPECSを使ってもらえず、困っている。
- 考 察 -
全国のPECSユーザーからよく聞く話である。いろいろな角度から温和に(関係性を崩さず)進めていく必要がある。
- 手立て -
やってもらえない理由を聞く。理由に納得できない(根拠がない、支援が妥当でない)のであれば、丁寧にPECSの必要性を伝えていく。動画を何度も見ていただく。他の関係者(相談員・ドクター・放課後等デイサービスなど)へのアプローチも行う。
- 結 果 -
担任に動画を何度か見てもらったら、その効果を理解してもらえた。
PECS研究会の研修に担任が参加してくれ、学校でも少しずつ取り組んでくれた。ただ、ワークショップを受講していないので指導のエラーが多い。
また、次年度 担任が変わり上手く引き継がれなく、同じ課題に直面している。
いろいろな関係者と連携し、学校に働きかけてもらっている。
ポイント:動画での共有/いろいろな関係者と連携